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現在価値と未来価値

会長のたわごと

企業の資産には、貸借対照表や損益計算書には表れない無形の「知的資産」があります。

例えば、特許や商標権、著作権などの権利化されたもの以外にも、

アイディア、ノウハウ、ビジネスモデル、ブランドなどがあり、

さらに企業理念や人材、技術力、営業力、信用力など、決算書に表示されない「無形の資産」です。

形が無いだけに評価しにくいのも事実ですが、この「知的資産」こそが “企業競争力”の源泉と言えます。

 

ある意味、企業は現在価値と未来価値に分けて観察する必要があります。

その意味では、決算書に存在する有形資産は現在の価値です。

ただ、これら目に見える決算書のみで、企業評価する人達も多く存在しています。

それはあくまで、「過去」と「現在」を評価したに過ぎないのです。

しかし、本当に重要な企業価値は、将来どれくらい利益を生み出すことができるかという「未来価値」です。

これを予測するには有形資産を見ているだけでは分かりません。

それよりも、過去から蓄積してきた「知的資産」を冷静に観察する必要があります。

 

「現在価値」が赤字にもかかわらず「未来価値」が高いと評価された場合は、

以前の東証マザーズもそうでしたが、市場再編されたあとのグロース市場でも上場が可能な時代です。

企業を評価する場合、投資家はもちろんですが就活学生さえも未来価値を予測しようとします。

それは、企業の存続が過去や現在に関係なく、すべて未来活動の営みにかかっているからです。

 

それでは、私たち個人の場合はどうでしょうか?

一般的に日本の金融資産の60%超は、60歳以上の人が保有しているといわれます。

彼らの現金や預貯金、株式、投資信託などの「金融資産」に、不動産や貴金属などの「実物資産」を加えるともっと多くなるはずです。

このような理由から、経済の活性化のために60歳以上の人達から、

もっと若い世代に資産が流れる政策が必要と言われる昨今です。

しかし、遅かれ早かれこの世代の金融資産は、やがて相続などで次の世代に受け継がれ社会に還流していきます。

 

ところが、その人達がいなくなると同時に、消滅してしまう資産があります。

それは、その世代の一人ひとりが保有している「体験知」という資産のことです。

つまり、企業で言うところの、ノウハウ、企業理念、技術力、営業力、信用力など

決算書に表示されない無形の資産「知的資産」に匹敵するものです。

 

この知的資産が企業競争力の要であるように、個人にとっても代えがたい貴重な資産です。

この資産が、個人の死と共に消滅してしまうのは余りにも勿体ない話です。

 

後藤新平は、人生の死後に残すべきモノとして

「財を残して死ぬは下なり、事業を残して死ぬは中なり、人を残して死ぬは上なり」、と評していますが、

事業や人材を残すというのは、誰でもができる環境でないかも知れません。

 

しかし、どのような人でも、自分が生きてきた人生体験から得た「体験知」は蓄財されているはずです。

60歳以上の人は、私も含め相続対策には真剣ですが、体験知という無形の「知的資産」を残すことに無頓着なようです。

 

それは高いハードルのせいかもしれません・・つまり、どういう方法で残すかということです。

IT化著しい時代ですが、今のところ人類最大の発明と言われる「言語」を駆使するしかなさそうです。

 

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