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過剰と不足

会長のたわごと

昔、自宅の食卓よりも多いと思うほど通い詰めた居酒屋さんがありました。

大将が一人でやっている小さな店です。

なぜ、それほど気に入ったかと言うと、とにかく魚介類が超新鮮で旨い。

それもそのはずです。その日の料理ネタは、

当日の朝から大将自身が小舟で近海の沖合に出て、獲ってきたものばかりです.

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店舗内にメニューは一切ありません。席に座って目の前に出された料理が、その日のメニューです。

また次に何を出されるのか、お客さんは知りません。

時には、カウンター越しに魚をさばいている包丁の手元が見えるので、次に出される料理を予測します。

しかし、それは隣のお客さんに出されたりします。つまり目の前に置かれて初めて自分が食べる料理が解ります。

ある時、「この店は魚が旨いと聞いて来たんだけど、鯵の刺身たのむワ!」と注文した一見客がいました。

数分して気が付くとその客はいなくなっていました・・

「料理を何にするかは私が決めます・・お客さんじゃありません!」と言われたのです。

ことさように横柄にもみえる、頑固一徹な大将です。しかし、味に拘りを持った常連の客でいつも満席でした。

これら常連客に料理が出されるときは、「食べたら分かる!と言わんばかりに、無言のままポンと置かれます。

およそサービス業とは思えない空気の居酒屋に、何故お客さんは通い続けたのでしょうか?

一般的な店の魚は、卸売り市場から仕入れたモノ、水槽で飼っていたモノ、遠隔地の養殖モノだっりします。

その点この居酒屋は、今朝獲ってきたばかりの「天然の地モノ」が売りでした。

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先日、知人と和食料理店に行った時のことです。

共通の話題で話が盛り上がったとき、魚料理が運ばれてきました。

料理を置くと同時に「これは〇〇産の〇〇というお魚で・・」と説明をし始めたのです。

こちらから説明を求めた訳ではありません。

私たちは話を中断し、若い店員さんの覚えたばかりの“口上”を聞く羽目になりました。

上司から教えられたことを、お客さんの前で一生懸命語ろうとしている姿に押されたからです。

そして、私達の話がさらに佳境に入ったタイミングで、次の料理が運ばれてきました。

再び、私たちの会話を中断させて、「説明を聞きなさい!」と言わんばかりに味付けや素材の口上をし始めました。

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確かにお客様心理としては、料理の素材や産地を知ることで、安心して美味しく頂ける効果があります。

その行為は、よりおいしく召し上がって頂いたり、より食事を楽しんでもらったり、

お客様満足を高める「手段」のはずです。

お客様の会話に割って入ったり、中断させてまで説明する姿勢は、手段が「目的」になっています。

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論語の「過ぎたるは及ばざるがごとし」は有名ですが、

さらに徳川家康の遺訓には、「及ばざるは過ぎたるより優れり」と記されています。

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あなたなら、「説明過剰」の店と「説明不足」の店と、どちらを選択しますか?

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