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日本経済新聞1月29日の一面トップに「国内最大の不動産投資・米ファンドが3000億」という記事が掲載されました。内容は、東京や大阪など中心に賃貸マンション約220棟を、まとめ買いしたと云うことです。

日本の不動産業界の流れでは、超低金利政策がスタートした2013年ごろから賃貸マンションの売買が活発化し、不動産価格が急上昇していきました。比例して、賃貸マンションを含む収益物件の売買が過熱ぎみで2018年ごろまで続きました。その間、スルガ銀行の不正融資などもあり、近年では賃貸マンションに対する金融機関の融資規制が厳しくなり、2018年から2019年にかけては過熱気味の売買も沈静化してきたところでした。

おりしもそのようなタイミングで何故、日本国内最大の投資なのか?・・その背景を読み解いてみると・・・。
今回の買主である米国投資ファンド、ブラックストーン・グループは、世界の不動産関連の運用資産だけで約17兆円と世界最大級の規模を誇っています。
世界的に見て、年金基金や保険会社などロットの大きい投資家は、経済の影響をモロに受ける金融商品(株式や債権)では収益の確保が難しくなり、相対的に安定した利回りが見込める不動産投資ファンドへ運用委託を増やしているようです。

それにしても「えっ~?」と思わされたのは、この同じ物件群をGE日本法人から2014年にブラックストーン自身が約2000億で購入し、一部追加して2017年に中国の安邦保険に2600億で売却し、再び3000億で買い戻したことです。

日本の不動産業界にも、本来の価値よりも何らかの環境で安い状態となった不動産を購入し、リノベーション等を施し価値を高めて売却する。いわゆる「ディストレスト投資」は盛んですが、このケースのように同じ物件の2度買いはほとんど行われません。

しかし、不可思議な売買の背景にあるのが、日本の金利水準の低さのようです。
記事によると、「投資利回り-調達金利」で表す「利回り差」は、東京のオフィスビルに投資した場合2019年9月時点で2.8%。ニューヨーク2.3%。上海2.3%。シンガポール1.8%など世界の主要都市比べて高い・・と云うことです。

日本の金利の異次元緩和は、世界基準で判断する海外勢にとっては、現在も格好の不動産投資市場になっているのが現実です。ちなみに、ブラックストーンの世界にまたがる運用資産総額は約48兆円だそうです。日本国の歳入金額に匹敵する規模です。

いまや、国内の不動産を「日本の物差し」だけで精査していると、判断を誤る時代です!
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