お知らせ
心の鍛錬
「心の鍛錬」
私の小・中学生時代の同級生で友人に棟田利幸さんという人がいます。
今年の2月、彼の「講道館・九段昇段」祝賀会に参加しました。
九段になるためには、まず8段になってから20年が経過しないと選考の対象にならないうえ、
さらに業界への貢献度や後輩の指導育成なども勘案されるなど、ハードルは極めて高いのです。
愛媛では、38年ぶりで全国でも20名ぐらいしかいないそうです。
現役時代は、県大会・四国大会・全国大会などで目覚ましい活躍を遂げ・・
特に「四国大会10連覇」という偉業は、未だに誰にも破られていません。
自分の経歴紹介の中で、どうしても勝てなかった相手が二人いると明記しています。
一人は元JOC会長でロサンゼルス金メダリストの山下泰裕氏、
もう一人は講道館館長でモントリオール金メダリスト上村春樹氏・・
ただ、当日はその上村氏も東京からお祝いに駆けつけていました。
利幸さんには「棟田泰幸」君という息子さんがいます。
その泰幸君もやはり柔道家ですが、現在は警視庁で柔道の教官をしています。
彼の現役時代は・・・
日本にとどまらず「2003年大阪大会」と「2007年リオデジャネイロ」の世界柔道選手権で優勝しています。
世界柔道のトップ選手とし名を馳せました。
世界の頂点に2度も立った時点で、「父親を完全に超えた!」と感じたのは私だけではないと思います。
ところが、祝賀会での息子さんの挨拶は、・・・・・
「私が中学や高校の柔道大会に出場すると・・
周囲から「利幸さんの息子か?」と言われ・・
大学の柔道大会に行っても常に「利幸さんの息子か?」と言われ続けてきました」
「社会人になったら、そのプレッシャーから解放されるかと思いきや、
今も、”柔道家として社会に貢献している父の背中”を追い続けています!」と・・
スポーツに限らず目標に到達したり、格上の人にちょっとでも優った瞬間に有頂天になるのが私達です。
それどころか、強敵を打ち負かしたことを自慢し、自画自賛に酔いしれてしまうのが凡庸の所以です。
しかし、 一流のアスリートに共通している点として、競技の勝敗、
上手下手にかかわらず、目上の人や先輩に対する敬意を怠りません。
トップアスリートは、頂点に近づくほど自分の至らない点を追求し、謙虚さを失いません。
スポーツ界でよく言われる「心・技・体」の語源は、
1953年に柔道家の道長伯氏が「柔道の最終目的は心技体の鍛錬である」
と云ったことによって広まったとされています。
しかし、いくらトップを走ってきたアスリートも、
年齢を重ねるにつれて「体」の限界と同時に「技」も低下してきます。
これは抗しがたい現実です。
だが、「心」の鍛錬にはゴールがないということを、講道館柔道が教えています。