昨今、繰り返される相続により所有者不明の土地が増え続け、これが大きな社会問題となっています。全国の所有者不明の土地を合わせると、その面積の合計は九州全体の面積を上回るとも言われています。法制度見直しの背景として、所有者不明土地の「発生予防」と、既に発生している所有者不明土地の「利用の円滑化」の両面から、総合的に見直しをされることになります。
■法制度整備の概要
今回、見直し及び創設される主なものは次の三つになります。
所有者不明土地の発生予防の観点から、「不動産登記法の改正」「相続土地国庫帰属法の制定」、所有者不明土地の利用の円滑化の観点から「民法等の改正」になります。それぞれについて概要を見ていきましょう。
■不動産登記法の改正
①相続登記の義務化
現在相続により所有者が変更になる場合、相続登記をするかどうかは任意です。そのため相続登記をせず放置され、先代・先先代の登記がそのままになっています。このことが所有者不明土地を生む一番の原因です。
改正の基本的ルールは、相続人がその所有権を取得した事を知った日から3年以内に相続登記申請をしなければなりません。追加的なルールとして、遺産分割協議にて不動産を取得した相続人は、遺産分割成立の日から3年以内に登記申請をする必要があります。
新たに、相続人が申請義務を簡易に履行できるように、新しい登記制度が創設されます。
②相続人申告登記の創設
相続人申告登記とは、登記簿上の所有者に相続が開始したこと、自らがその相続人であること、この二点を申し出ることで、相続登記の申請義務を履行したものとみなす制度です。
相続登記とは異なり、あくまでも単なる報告的な登記であり、申し出に従って登記官が職権で付記します。この場合の申告者への登録免許税は非課税になります。
この改正の施行日ですが、令和6年4月1日となっており、正当な理由なく登記申請義務に違反した場合、10万円以下の過料の対象となります。
相続登記の義務化でもっとも注意すべきポイントは、改正法施行日以前に発生していた相続についても適用されるということです。現在相続登記がなされていない不動産を所有している場合、施行日から3年以内に相続登記をしなければなりません。この点は今から準備をしていく必要があります。
■相続土地国庫帰属法の制定
相続等により土地を取得した者が、その所有権を放棄し、土地を国庫に帰属させることが可能となる制度が創設されます。
この制度を利用するためのポイントとして、「ヒト・モノ・カネ」の3つの条件が必要となります。
①ヒト
相続で取得した相続人に限ります。生前贈与や売買で取得した人は対象外です。
②モノ
どんな土地でも、国が引き取ってくれる訳ではありません。引き取ったあと、再利用が可能と判断された土地になります。また次のような土地は引き取り不可です。
・建物が存在する土地
・抵当権等の担保権が設定されている土地
・隣地との境界が明確になっていない土地
・通常の管理処分に過分な費用・労力が必要な土地 等々
現実的に、所有権を放棄したい土地は原野・山林などが多いと思われます。これらの土地は境界が未確定な場合が多く、本制度の利用が難しいと考えられます。
③カネ
引き取ってもらえる場合でも、一定の管理費を負担しなければなりません。負担する金額は、10年分の土地管理費相当額となります。土地の種類により管理料の金額は異なってきます。
またその土地が要件に適合するかどうかを国に審査をしてもらうようになりますが、その際にも審査手数料が必要になります。この審査手数料は、土地一筆当たり14,000円です。引き取り不可になった場合でも、審査手数料は返還されません。
相続土地国庫帰属制度の施行日は、令和5年4月27日となっています。
■改正民法・遺産分割における相続分の期間制限
遺産分割協議において、話し合いが纏まらず10数年間放置されているケースも多々あります。
この場合多くは、「特別受益」や「寄与分」と言った生前に一定の相続人に対して行われた贈与や
介護に尽力した相続人がその寄与に相当する財産分与の請求が纏まらない事が原因です。
今回の改正で、特別受益及び寄与分の規定は、相続開始の時から10年を経過した後にする遺産の分割については、適用しないと規定されました。つまり相続開始から10年経過すれば、原則法定相続分での遺産分割になってしまうと言うことです。この改正は、令和5年4月1日から施行されており、施行日以前に発生した相続についても適用されます。
今回改正される民法や不動産登記法は、いずれも施行日以前に発生した相続にも適用されます(遡及効)。改正の内容について詳しくお知りになりたい方は、お気軽にお問合せ下さい。
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