被相続人が所有されていた財産は、相続税の課税においてどのように評価されるのでしょうか。同じ土地でも、その利用方法で、評価は大きく変わります。今回は、土地について評価がどう変わるのかをお話します。
■相続財産の評価基準について
相続財産の価格は、課税時期(相続発生日)の「時価」で評価されます。時価とは、「課税時期において、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額」のことを言います。ただし全ての財産を時価評価するとなると、実務が煩雑になり、また税の公平性が損なわれかねません。そこで原則として、土地や建物、株式などの資産は国税庁の財産評価基本通達に定められた評価方法により算出するものとされています。
■一般的な土地の評価方法とは
土地の価格については、「一物四価」とか「一物五価」とか言われています。概ね金額の高い順に並べると、①売買価格(時価)②公示価格③基準地価④相続税評価額(路線価)⑤固定資産税評価額の順番になります。一般的な市街地において、相続時の評価として使うのは、④の路線価です。
路線価とは、各々の土地の前面道路に価格が付いており、その価格に土地面積を乗じて総額を計算します。毎年1月1日に路線価が見直され、7月1日に発表されます。宅地や駐車場などの自用地は、基本路線価で評価します。
■道路の接道状況や土地の形で評価が変わる
同じ路線価の土地でも、道路の接道状況や土地の形によって評価が調整されます。この事を画地調整と言います。画地調整の主だったものを紹介します。
・側方路線影響加算・・・角地にかかる評価になります。角地は利用価値が高い為、評価もプラスに補正されます。
・奥行価格補正・・・奥行きが長い(短い)土地は、その距離に応じて補正されます。(概ね減価)
その他、不整形地、無道路地、道路と高低差がある土地についても一定の補正割合で減価されます。このように各々の土地について、個別に評価して行くこととなります。
■他人に貸している土地は評価が下がります
他人に土地を貸して、その借主が建物を建てている土地のことを、貸宅地(底地)と言います。国道などロードサイドに土地をお持ちで、コンビニなどの店舗(テナント)に貸しているようなのが代表的なケースです。貸宅地の評価は、自用地評価×(1-借地権割合)という計算式になります。借地権割合は、地域によって異なりますが、30%から90%の間で設定されています。仮に、自用地評価5,000万円、借地権割合70%の土地であれば、5,000万円×(1-70%)=1,500万円となります。相続税評価5,000万円を1,500万円まで大幅に下げることができます。但し他人に土地を貸すと、長期間自らが使うことができなくなるなどの制約があることも、十分に考慮する必要があります。
■賃貸物件を建てると土地の評価は下がります
他人に土地を貸すのを躊躇される方でも、相続税は下げたいと思われる方は多いと思います。このような方には、自分の土地の上に、自分で賃貸物件を建築するという方法があります。このような賃貸物件が建っている土地を、貸家建付地といいます。
貸家建付地の評価は、自用地評価×{1-(借地権割合×借家権割合×賃貸割合}という計算式になります。
借地権割合は、その地域によって30%から90%、借家権割合は全国一律30%です。問題は賃貸割合です。賃貸割合とは、その建物の賃貸できる総床面積に対する実際に賃貸している床面積の割合の事を言います。例えば、全10戸(全戸同じ床面積として)の賃貸物件で、自用地評価が5,000万円、借地権割合70%、借家権割合は30%、全戸賃貸中の場合の評価は、5,000万円×{1-(70%×30%×100%}=3,950万円となり、1,050万円評価を下げることができます。しかし次のような場合はどうでしょうか。全10戸中、2戸は家族が使用しており賃料はもらっていない。また2戸は室内のリフォームに多額の費用がかかるため、何も手を付けず貸すことができない状況のままになっている。10戸中4戸が貸せていないので、賃貸割合は60%となります。このときの土地評価は、5,000万円×{1-(70%×30%×60%)}=4,370万円となり、630万円しか評価が下がらないことになります。
全戸賃貸中の場合に比べると、420万円も評価減の金額が変わってきます。安易に自らが使用する、リフォームせず募集できない状態のままなどで賃貸割合が下がると、相続時に思わぬ相続税が高くなることもあります。賃貸割合を高めておくことも、重要な相続対策の一つです。
■相続税をいくら納めるかは、財産の評価次第
今回土地の評価方法をご紹介してきましたが、相続税を申告する場合において、所得税や法人税などと比べて大きく異なる点があります。それは、申告する納税者側で遺産を評価しなければならないという点です。相続税は、被相続人の財産を相続人側が評価し、それを基に税額を計算して相続税を納めます。高い評価で申告した場合、税務署からは何も言われません。しかし低い評価で申告した場合は、税務署から指摘が入る事があります。
相続税の申告は自己責任が大前提ですので、例えば本来であればもっと低く評価できたものを、みすみす高く評価して相続税を払い過ぎたとしても、税務署は何も教えてくれないということです。
以上のように、不動産(土地)の評価をどのようにして下げるのか、事前にどのような評価減の対策をするのかが重要になってきます。弊社でも不動産の評価に関する相続対策の相談を承っております。ご興味のある方は、是非お問合せ下さい。
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