今までは財産を残す人=被相続人の立場から、相続対策としての分割対策や納税対策、遺言などについてお話ししてきました。
今回は、財産を受け継ぐ立場=相続人の視点に焦点を当ててお話いたします。
■遺言書がある場合の遺産分割
相続が発生した場合の遺産分割については、遺言書があるかないかで大きく異なります。遺言書がない場合、法定相続人全員の参加と合意による遺産分割協議において、各々の相続分を決めていくことになります。遺言書がある場合は、その遺言書の形式に関わりなく、被相続人が死亡した時点からその効力が発生し、遺言書の内容どおりの遺産分割ということになります。
■相続人の一人または複数人が遺言書の内容に納得できない
親が亡くなり、遺言書を遺していました。その遺言書には、あなた以外の相続人一人に全財産を相続されると書かれていました。相続人はあなたを含め3人います。あなたやもう一人の相続人がこの内容に納得すれば、遺言書どおり一人の相続人が全財産を相続します。しかし現実問題として納得できない場合の方が多いのではないでしょうか。
■遺言書の内容に納得できない場合に出来る事
遺言書の内容に納得できない場合、相続人ができることは次の2つです。
①遺言書の効力を争う
②遺留分侵害額請求を行う
この二つしか方法はありません。
それぞれについて、内容を詳しく見ていきたいと思います。
■遺言書の効力を争う
まず、遺言書が無効であることの確認調停の申立を行います。申立の結果、調停で無効が確認できなかった場合は地方裁判所に対して、遺言無効確認の訴訟を起します。
遺言の無効確認訴訟の主な論点は、
(A)遺言の方式の違反
(B)遺言の偽造
(C)遺言の詐欺、錯誤
(D)遺言内容の公序良俗違反
(E)被相続人の遺言能力の有無
などが挙げられます。つまり単に遺言の内容に納得がいかないというだけでは無効を争うことはできません。また遺言の形式によってもその争点が異なります。
自筆証書遺言であれば、(A)~(E)について状況証拠などから争うことも可能かと思います。しかしながら公正証書遺言であれば、作成時に法律のプロである公証人が関与し、また二名以上の証人もいることから、一般的に無効を争うのは困難と言えるでしょう。もちろん公正証書遺言でも無効になったケースがない訳ではありません。
■遺留分侵害額請求を行う
遺言書は、調停や裁判で無効が認めなれなければ、その効力は有効です。この場合は、遺留分侵害額請求をする以外に方法はありません。
遺留分とは、民法により法定相続人に認められた最低限の保証です。遺言や生前贈与などで行き過ぎた財産の処分を防ぐために設定されています。総体的な遺留分の割合は一部を除き、概ね法定相続分の二分の一となっています。このケースでは法定相続人が3人なので、各々の遺留分は1/3×1/2=1/6ということになります。したがって遺産の6分の1に相当する額の金銭は取り戻すことができます。
この遺留分侵害請求ですが、2019年の民法改正によりその行使の方法が変わりました。改正前は、原則不動産などの遺産全体に対して効力が発生しました。つまり遺留分を侵害する部分について物権の共有(現物返還)により遺留分相当に当てることになっていました(物権的効果)。
改正により、遺留分侵害についてはその相当する部分全てを金銭で支払わなければならないと変わりました(金銭債権が発生)。例外規定は認められていません。
また遺留分侵害額の請求権には消滅時効があります。
・相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知ったときから1年間
・相続開始のときから10年間
となっています。この期間を過ぎると、遺留分侵害を請求することはできません。
いずれにしても、著しく公正性を欠く遺言、偏りすぎた財産の処分は例え公正証書遺言を作成したとしても、争いの種になってしまいます。遺産分割を考える場合には、各法定相続人の遺留分を考慮して考えていく必要があります。
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