令和2年4月1日の民法改正により、これまでの「瑕疵担保責任」が廃止され、新しく「契約不適合責任」が制定されました。何やら堅い言葉ですが、不動産の売買契約時には必ず登場する、売主及・買主双方においてとても重要な内容です。今回は、新たに制定された「契約不適合責任」についてご紹介します。
■「瑕疵担保責任」から「契約不適合責任」へ
「契約不適合責任」とは、不動産の売買において売主に生じる責任で、売買の対象物となる不動産の種類・品質・数量などに関して契約内容と合っていない場合に、買主に対して負うべき責任です。
旧民法では、「瑕疵担保責任」と呼ばれていましたが、民法改正により「契約の内容に適合しないもの」という意味の「契約不適合責任」に改められました。
■民法改正による変更点とは
旧民法で使われていた「瑕疵(かし)」という言葉は、「キズ・故障のような欠陥部分」の事です。目に見えて修復が必要なものについては解りやすいのですが、シロアリ被害や土壌汚染など、建物の新築時から現在まで表面化していない欠陥があることもあり、これを「隠れた瑕疵」と呼びます。「隠れた瑕疵」を含め、購入した物件に瑕疵があると買主にとって「契約の目的を全て達成できない」ケースも発生してしまい、その場合、物件の購入自体が無意味なものとなってしまいます。
そうならないように、売主は「物件状況確認書」や「告知書」という添付書類をもって買主へ現在の建物のコンディションや過去の所有者から引き継いでいる情報も併せて買主へ伝えます。この書類をもって「説明」を行っている瑕疵については、売主・買主双方が対象部分の瑕疵を知った上で契約をするので、将来に向かって責任の所在が明確になり、売買契約は問題なく取り交わされることになります。しかし、「隠れた瑕疵」については売主も気が付いていない事ですから告知のしようがありません。そこで一定期間を定め「契約内容と異なるものを売却したとき」、 物件引き渡し後も売主が責任をもって修繕するというのが「契約不適合責任」の重要部分となります。また、契約内容と相違があった場合に買主がとり得る手段としては、これまでの「解除」「損害賠償」に加えて、「追完請求」「代金減額請求」なども認められるようになりました。
■実際の売買契約では多くが「免責」に
この「契約不適合責任」ですが、例えば「契約不適合については引き渡しから2年間」という内容があります。簡単に解釈すると「売ったあとの不動産に何かトラブルがあったら売却後2年間は売主が修理代を払う」という事になります。
「え?例えば雨漏りが発生したらどうなるの?」はい、それも売主が修繕しなければなりません。でもそれでは「お互い経年劣化の進んだ建物であることを知った上で契約しているのに売主が責任を持たなくてはならないの?」という事になります。なので、個人間の売買契約の場合は、「隠れた瑕疵」の部分については免責に、その他の瑕疵については告知を行い告知部分についても免責とするという特約を契約に含ませることができます。売主・買主が個人(いわゆる宅建業者や事業者でない)の場合は、双方の同意があれば免責特約を記載することができるのです。
■免責は「無効」になるケースもある!?
それでは、どのような取引でも免責は認められるのでしょうか?
取引には「個人」と「法人」、「事業者」と「消費者」という定義があり、それによって責任の重さも変わってくるというのが重要なポイントです。
まず1番規制が厳しいのが「宅地建物取引業者」いわゆる不動産会社の所有する物件の売買です。宅地建物取引業者が売主の場合、問答無用で引渡しから2年以上契約不適合について担保しなければなりません(宅地建物取引業法)。更に民法ではこの定めより買主に不利になる特約は無効になります。従って、宅地建物取引業者が売主の場合、免責特約の記載ができないのです。これは買主側からすると安心した取引が出来るポイントですね。
さらにもう1点重要なポイントがあります。それは、「消費者契約法」という法律の規制も適用されるということです。売主が「事業者」、買主が「消費者」の場合、消費者を保護する観点から、「売主である事業者の契約不適合責任による損害賠償責任の全部または一部を免除する特約は、事業者に対する追完請求権又は代金減額請求権がある場合を除き無効となる(改正消費者契約法第8条)」という法律があります。
売買契約において、買主が「消費者」と扱われる場合は、注意しなければなりません。ただし、個人で賃貸経営をしていても「事業者」と定義される場合もあるため、「個人」であっても「消費者」に定義されるとも限りません。その取引における双方の状況によって変わってきます。一方、買主が法人の場合「事業者」となりますので、免責特約を有効にできる可能性も高く、安心して売却することができるので、売却先として法人の買主を探すのも1つの方法かもしれません。
■売却後のリスクに備えよう
「契約不適合責任」では、売主のリスクが高くなる傾向にあります。売却後のリスクにも備えるためにも、まずは売買契約の専門家に相談してみませんか?
日本エイジェントでは、収益分譲マンション・収益一棟物件・事業用地など様々な不動産の取り扱いを行っています。数ある売買情報の中から比較検討し、お客様のニーズに最適な収益不動産の売買のお手伝いをさせていただきます。収益不動産の購入・売却をご検討されている方がいらっしゃいましたら、日本エイジェント 売買課(TEL089-911-2510)までご相談ください。
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