現在、生前贈与(特に暦年贈与)は、相続税の節税対策や分割対策、納税資金準備対策に大きな効果を発揮しています。しかし、令和3年度税制改正大綱の中で非常に気になる記述がありました。今回は税制改正大綱の中から読み取れる相続税と贈与税の一本化についてお話します。
■税金の中でも少し特殊な贈与税
一つの税金には、一つの税法が存在します。例えば所得税には所得税法、法人税には法人税法という形です。しかし贈与税については、贈与税法という法律はありません。相続税法の中に相続税と贈与税の二つが規定されています。つまり贈与税法は、相続税法を補完する形で存在しています。
■令和3年度税制改正大綱の記述によると
それではどのような内容が記載されているか、ご紹介します。
「わが国の贈与税は、相続税の累進回避を防止する観点から、高い税率が設定されており、生前贈与に対し抑制的に働いている面がある。一方で、現在の税率構造では、富裕層による財産の分割贈与を通じた負担回避を防止するには限界がある。
諸外国では、一定期間の贈与や相続を累積して課税すること等により、資産の移転のタイミング等にかかわらず、税負担が一定となり、同時に意図的な税負担の回避も防止されるような工夫が講じられている。
今後、こうした諸外国の制度を参考にしつつ、相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直すなど、格差の固定化の防止等に留意しつつ、資産移転の時期の選択に中立的な税制の構築に向けて、本格的な検討を進める。」
難しい内容ですが、分りやすく言うと、現在の日本の税制では、元気なうちに家族などに何年かかけて財産を贈与すれば、少ない金額の贈与税の負担、もしくは無税で財産を移転させることが可能です。それにより将来の相続税を意図的に節税することできます。それため富裕層の節税対策として使われており、結果として資産の固定化につながっています。
■贈与税と相続税の一体化とは
そこで国が考えているのは、贈与税と相続税を一体化して、贈与税の節税効果が発揮されない仕組みの検討です。相続税の計算において、「生前に贈与した財産は、全て相続時の相続財産に加算する」という税制への変更です。
諸外国を見てみると、アメリカでは生前贈与財産は全て相続時の相続税の課税対象財産になっています。ヨーロッパは国よって違いはありますが、相続開始前の7~15年位の期間の贈与財産は相続税の課税対象財産とする制度を採用しています。
日本の税制は、相続時精算課税制度を使った贈与財産は、全て相続財産に加算されます。しかし暦年贈与制度を使った贈与財産は、相続開始前3年分のみが加算されることとなり、それ以前の贈与財産は相続財産には全く加算されません。この暦年贈与制度を中心に大きく見直しされると思われます。改正時期や改正内容については、今後の議論によりますが一定程度の期間(2年~5年程度)はかかるとは思われます。そこで考えなければならないのが、今後この制度が改正されるまでに、生前贈与を活用した相続対策を考えていくということです。将来税法の改正が行われたとしても、それ以前に行われた贈与については、改正した税法は適用されないと考えられます。
■生前贈与(暦年贈与)活用のポイント
では生前贈与(暦年贈与)をどう活用すればいいでしょうか。もう既に生前贈与を行っているオーナー様も多いと思います。しかしながら、その贈与は本当に相続対策の観点から適正でしょうか。
例えば毎年110万円以下で贈与をしているような場合、確かに110万円の基礎控除内贈与であれば、申告が必要ない、税金もかからないというメリットはあります。しかし110万円以下の贈与であれば、相続対策としての「財産減らし効果」は薄くなります。税金を払っても、毎年310万円(贈与税率10%)あるいはそれ以上の贈与していく方が相続対策としての効果がより発揮できるかも知れません。果たしてどのような生前贈与(暦年贈与)がいいかは、家族構成と財産総額によって異なってきます。いずれにしても税制改正までに、いかに積極的な贈与ができるかがキーポイントになります。
以上のように、効果的な贈与にはどんな方法があるのか、事前にシュミレーションすることが重要になってきます。弊社でも生前贈与に関する相続対策の相談を承っております。ご興味のある方は、是非一度お問合せ下さい。
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