令和6年1月より贈与税が大きく改正されました。今回はその改正の概要と影響についてお話します。
■二種類の贈与税
まず贈与税は税法上、二種類に分かれます。「暦年課税贈与税」と「相続時精算課税贈与税」の二種類です。この暦年贈与と相続時精算課税贈与は自由に選択することができます。しかしその選択は贈与する側ではなく、贈与を受ける側=納税者側で決定します。親が子に贈与する際は、子がどちらかを選択して納税することになります。
■「暦年贈与」の改正点
暦年贈与は、年間110万円までは非課税で贈与できる制度です。この制度を利用して子や孫に毎年110万円以内の贈与をされているオーナー様も多いと思います。また贈与税の税率と将来発生する相続税の税率を比較して、贈与税がかかってでもより多くの財産を子や孫に贈与されている方もおられます。しかしながらこの暦年贈与には、「生前贈与加算」という制限規定があります。「生前贈与加算」とは、相続開始前3年以内に行った相続人に対する贈与については、相続時に相続財産に持ち戻して相続税の計算を行うという規定のことです。つまり3年以内の贈与については、贈与による節税効果はありません。
今回の改正において、持ち戻しの期間が「3年」から「7年」に延長されました。つまり贈与してから7年間はご存命でなければ、相続税の節税効果は得られないということになります。
■「相続時精算課税贈与」の改正点
相続時精算課税贈与は、60歳以上の親や祖父母から18歳以上の子や孫に対して2,500万円まで無税で贈与できる制度です。一気に2,500万円の贈与をすることもできますし、数年に渡り少しずつ贈与しても構いません。累計が2,500万円を超えた場合、超えた金額に対し一律20%の贈与税がかかります。
しかし精算課税を選択した場合、贈与の期間に関わらず相続が発生した際、贈与財産の全てを相続財産に持ち戻して相続税を計算することになります。つまり精算課税贈与は原則節税効果はないということです。また一度「相続時精算課税制度」を選択すると、二度と暦年贈与には戻れません。
今回の改正において相続時精算課税贈与にも、「年間110万円の非課税枠」が新設されました。しかもこの非課税枠の110万円は、相続時の持ち戻しは一切ありません。つまり今まで暦年贈与の最大のデメリットであった相続財産への持ち戻しが解消されたことになります。
■改正で考えられる影響
相続税の節税対策として毎年110万円の非課税枠を利用している方は、今後は暦年贈与より相続時精算課税贈与を使う方が有利になります。持ち戻し期間が7年に延長された暦年贈与より、持ち戻しのない非課税枠を使った相続時精算課税贈与の方が節税対策の効果は発揮しやすくなります。
■「相続時精算課税贈与」の具体的活用方法
お持ちの収益不動産を、相続時精算課税贈与を使って生前贈与する方法です。
収益不動産は、賃料収入という収益を生みます。親世代が保有し続けている場合、その収益は親世代に入ることになり親世代の財産が増えていきます。結果として相続財産が増え、相続税も高くなることになります。事前に次世代に贈与することで、その収益は次世代に移転します。これ以降親世代の財産は増加することなく、相続発生時も贈与時の贈与額を持ち戻しされるのみです。贈与時の収益不動産の評価額にもよりますが、少ない贈与税負担で収益不動産を贈与できる場合もあります。
但し不動産贈与には、いくつかの注意点があります。その一つは、登記にかかる費用や不動産取得税です。登記における登録免許税の税率は、相続時の税率0.4%に対し、贈与では2%となり5倍の費用がかかります。同じく不動産取得税の税率は、相続時は非課税ですが、贈与では3%かかります。不動産贈与の場合、事前に十分確認をしておく必要があります。
■「暦年贈与贈与」と「相続時精算課税贈与」を併用した活用方法
例えば父から長男に暦年贈与課税贈与を使って110万円を贈与し、母から同じく長男に相続時精算課税贈与を使って110万円を贈与したとします。この場合長男は合計220万円の非課税枠が利用できます。
非課税枠を合算できるのは、「暦年贈与」と「相続時精算贈与」を併用した場合のみです。「暦年贈与」+「暦年贈与」及び「精算課税贈与」+「精算課税贈与」の場合は、いずれも非課税枠110万円になりますので注意が必要です。
いずれにしても、生前贈与は相続の場面で、分割対策・納税対策・節税対策のいずれにも大きな効果を発揮します。「相続時精算課税贈与税」の内容について詳しくお知りになりたい方は、お気軽にお問合せください。
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