不動産取引時において、水害ハザードマップにおける対象物件の所在地を事前に説明することを義務づけることとする宅地建物取引業法施行規則の一部を改正する命令が、7月17日に国土交通省から公布されました。
さらに、事前の重要事項説明時に具体的な説明方法等を明確化するため、宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方を示すガイドラインにも同時に内容が追加されています。
■「水害リスク説明」義務化の背景
近年大規模水災害が各所で多く発生していることにより、売買・賃貸関わらず不動産取引時において「水害リスク」が契約締結をするための重要な要素となっています。2019年7月、国土交通省は不動産関連団体に対し、不動産取引時にはハザードマップを提示し、取引の対象となる物件の位置等について情報提供するよう依頼しました。
そこから約1年、今回の公布により、依頼という形ではなく重要事項説明の対象項目として追加し、不動産取引時にハザードマップにおける取引対象物件の所在地について説明することを義務化することとなりました。
■改正の概要
国土交通省が交付した内容は以下の通りです。
(1)宅地建物取引業法施行規則について
宅地建物取引業法(昭和27年法律第176号)においては、宅地又は建物の購入者等に不測の損害が生じることを防止するため、宅地建物取引業者に対し、重要事項説明として、契約を締結するかどうかの判断に多大な影響を及ぼす重要な事項について、購入者等に対して事前に説明することを義務づけていますが、今般、重要事項説明の対象項目として、水防法(昭和24年法律193号)の規定に基づき作成された水害ハザードマップにおける対象物件の所在地を追加します。
(2)宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方(ガイドライン)について
上記(1)の改正に合わせ、具体的な説明方法等を明確化するために、以下の内容等を追加します。
・水防法に基づき作成された水害(洪水・雨水出水・高潮)ハザードマップを提示し、対象物件の概ねの位置を示すこと
・市町村が配布する印刷物又は市町村のホームページに掲載されているものを印刷したものであって、入手可能な最新のものを使うこと
・ハザードマップ上に記載された避難所について、併せてその位置を示すことが望ましいこと
・対象物件が浸水想定区域に該当しないことをもって、水害リスクがないと相手方が誤認することのないよう配慮すること
■ハザードマップとは
ハザードマップには洪水・内水・高潮の3種類があります。
言葉の定義が異なりますので今回を機に覚えておくと良いかもしれません。
・洪水
⇒台風や豪雨による堤防の決壊を指します。(外水氾濫とも言う)
・内水
⇒河川の堤防決壊とは異なり、近年、増加傾向にある集中豪雨(ゲリラ豪雨)などにより、下水道の排水処理能力を超えて溢れてしまう状況を指します。また、河川の増水により逆流する場合もあります。
・高潮
⇒台風などに代表される低気圧や強風により発生するものを指します。
(ちなみに津波災害警戒区域の津波⇒底で発生した火山活動や地震により発生するものを指します)
市区町村により3種全てあるところもあれば、洪水と内水が一緒になったもの、河川毎に異なるマップがあるところもあります。上記3種のハザードマップは全て説明しなければならないのと、河川毎にハザードマップがある場合はそれぞれ説明が必要です。
今回、不動産取引における「水害リスクの説明義務化」について紹介させていただきましたが、気になる点としては、説明するべきタイミングが「重要事項説明時」ということです。「水害リスク」の説明でお客様が不安を感じた場合、契約締結直前に突如キャンセルになってしまうことも考えられます。そのため、宅地建物取引業者はもう少し前の時点で事前(申し込み時など)に説明しておくことも必要になってくると思われます。
今後ハザードマップの説明が浸透していくことで、賃貸や売買の取引においても人気の地域など、市場が変わっていくことが考えられます。こういったルールの改正にもアンテナを張っておくことが、より良い賃貸経営に繋がっていくかもしれません。
私たちもオーナー様はじめ入居者様など様々な立場の視点を持って、お客様のお役に立てるような不動産会社であり続けられるように尽力いたします。
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