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大衆路線から個客戦略
一度チェックインしたホテルに帰り、自室に入ろうとカードキーを差し込んでガチャガチャしましたが、開きません。
自分の中では、エレベーターを降りて右の廊下を進み4つ目の部屋と認識していました。位置は合っていましたが、階数を間違えていました
その時思ったのは、何故ホテルはエレベーターや階段、部屋の位置、ドアの形状や色などすべてを同一にしなければならないのか?
宿泊客をひと括りのマスにしないで、せめて廊下かドアの色だけでも変えて欲しいと・・。
先日の日本経済新聞に、「大量生産多量販売・大量プロモーションを前提にした、同じマーケティングを行う、マスマーケティングが転換期を迎えている・・花王の低価格・大量生産品がシャンプー市場で8割を占めていたが、5割までに減った・・大量生産で消費者の平均層しかすくえないマス商品を淘汰する波は、化粧品やアパレル、食品などにも広がる・・」という内容の記事がありました。
つまり、大多数にあわせた「商品」ではなく、少ないけれどこだわりを持つ一部の層「スモール市場」を狙った商品やサービスが注目されているということです。
近年台頭しているスモールマスマーケットに特化した新興企業は、皆に好かれる商品ではなく「その人のニーズにとことん寄り添う」商品で勝負し、その層から圧倒的な支持を得る戦略です。
例えば、軽井沢にあるクラフトビールメーカー「ヤッホーブルーイング」は、SNSのファンから意見やニーズをデータ化し、それを商品開発やマーケティングに生かしています。マス「大衆」ではなく「ターゲットは徹底的に絞る」「賛否があっていい・・100人に1人が支持してくれれば良い」という姿勢で客層を絞ることで、一部のクラフトビール愛好家から熱い支持を得ることに成功しています。
そして、大阪から愛媛県しまなみ海道の大三島に移住し、昨年ご夫婦で始めたビール工房「大三島ブリュワリー」の高橋さんも、「大量生産・大量販売はしたくない、この味を理解してくれる人だけに限定して販売して行きたい!」と夢を語ってくれました。大手のビールでは真似のできない味わいに感動し、視察に同席した仲間全員が90分間も居座ってしまいました。
幼少の頃からITやSNSを使いこなし、「自分らしさ」を求める傾向の強いZ世代が消費者の主流となる時代、今後ますます「スモールマス市場」は拡大していくでしょう。
賃貸業界でも「部屋づくり」や「サービス」を、効率優先のマスマーケティングではなく、いかにニーズの異なる“個客”に照準を合わせるかに変化しています。